こんにちは!ドタバタ母さんです。訪問看護師として働いています。

今日は仕事の視点からの話です。

親の通院に毎回付き添う。薬を取りに行くために早退する。そんな日々を送っている方に読んでほしい内容です。

介護保険が使えない時期が、いちばん大変

「介護」というほどではない。でも、一人で受診させるのは不安がある。

受診の間隔が短くなり、そのたびに送迎する。処方された薬を取りに行く。説明を聞いて理解するのも、本人だけでは難しくなってきた。

この時期の家族の負担は、想像以上に大きいと感じています。

しかも介護保険を申請しても、この段階では非該当や要支援になることが少なくありません。介護保険では賄えないのに、手はかかる。 そして担っている家族の多くは、仕事を持っています。

支援の手が、いちばん届いていない時期だと思っています。

結論:介護保険が使えなくても、選択肢は4つあります

先に結論を書きます。

選択肢 何が変わるか 相談先
① 訪問診療に切り替える 通院そのものが不要になる 主治医
② 訪問薬剤指導を使う 薬を届けてもらえる 主治医・薬局
③ 家族会の支援を使う 受診付き添いや電話相談 地域の家族会
④ 自費の付き添いサービス 待ち時間も含めて任せられる 各事業者

介護保険が使えない=何も使えない、ではありません。 ①と②は医療保険の話なので、介護保険の認定がなくても道があります。

順に説明します。

① 通院をやめる、という選択肢

付き添いをどう工面するか。多くの人はそこで悩みます。

でも、そもそも通院しなくてよくなる方法があります。

通院が難しくなってきたら、訪問診療がある

医師に自宅へ来てもらう形です。定期的に診察を受けられるので、通院の送迎そのものが不要になります。

「寝たきりではないから訪問診療は利用できない」とは限りません。

病気や身体的な事情などで通院が難しい場合は、訪問診療を利用できることがあります。

相談先は、主治医でいい

どこに相談すればいいのか分からない。これがいちばんの壁だと思います。

まずは主治医に相談してください。

地域包括支援センターでも、市役所でもありません。いま診てもらっている先生に「通院が難しくなってきた」と伝えるところから始まります。

ただし、通院をやめると失うものもあります

ここは正直に書いておきます。

レントゲンなどの検査は、簡単にはできなくなる

病院に行けば当たり前にできる検査が、在宅では難しくなります。レントゲンはその代表です。

「気になるから撮っておきましょう」ができなくなる。これは確実にデメリットです。

採血やエコーは、在宅でもできることが多い

一方で、すべての検査ができなくなるわけではありません。

採血は在宅で行えることが多いです。エコー(超音波検査)も、機器を持ち込んで実施できる場合があります。日々の体調管理に必要な範囲は、意外とカバーできることがあります。

「どこまで検査したいか」は、本人と家族の希望次第

結局のところ、ここに行き着きます。

どこまで検査をして、どこまで治療をしたいのか。

万全の検査体制を求めるなら、通院を続けたほうがいいでしょう。日々を穏やかに過ごすことを優先するなら、訪問診療が合っているかもしれません。

正解はありません。 本人と家族が何を望むかで変わります。だからこそ、選択肢があることを知ったうえで選んでほしいのです。

② 薬は、届けてもらえます

意外と知られていないのがこれです。

薬を取りに行くためだけに早退する必要は、ないかもしれません。

薬剤師が自宅を訪問して、薬を届け、飲み方の説明や管理をしてくれる仕組みがあります。

認定を受けているかどうかで、制度の名前が変わります

ここが少しややこしいところです。

介護保険の要支援・要介護認定を受けている場合は、原則として介護保険の「居宅療養管理指導」。 認定を受けていない場合は、医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導」として利用します。

名前は違いますが、やってもらえることは同じです。

つまり、介護保険が非該当でも、医療保険のほうで使える場合があります。 「介護保険がないから無理」と諦めてしまう前に、相談してみてください。

これも主治医、あるいは薬局に相談してください。

③ 費用が心配な人へ

「訪問診療は高いんでしょう?」

よく聞かれます。正直に言うと、通院より費用は高くなります。

でも、そこで諦める前に知っておいてほしいことがあります。

高額療養費制度で、合算できることがある

医療費の自己負担には上限があります。上限を超えた分が戻ってくる高額療養費制度です。

訪問診療も、医療保険で受ける訪問看護も、どちらも医療保険の医療費です。

1か月の自己負担額が高額療養費の自己負担限度額を超えた場合、超えた分が高額療養費として支給されます。

つまり、訪問診療と訪問看護を組み合わせても、負担が単純に2倍になるわけではないということです。

(制度の細かい条件は状況によって変わります。実際の金額は医療機関や薬局に確認してください)

体調管理を訪問看護に任せるという考え方

これは私からの提案です。

医師の訪問は月に1〜2回が一般的です。その間の体調管理を、訪問看護に任せるという使い方があります。

  • 血圧や体温の変化に早く気づける
  • 薬をきちんと飲めているか確認できる
  • 気になることがあれば医師に連絡が入る

家族が毎日確認していたことを、任せられます。 そして費用面でも、高額療養費で合算できる可能性があります。

私自身がこの仕事をしているので、ここは手前味噌に聞こえるかもしれません。でも「日々の不安を誰かと分け合える」ことの価値は、実際に大きいと感じています。

④ 家族会という受け皿

もう一つ、あまり知られていない選択肢があります。

家族会です。同じ立場の家族が集まる会で、受診の付き添いや電話相談をしているところもあります。

同じ経験をしてきた人が相手なので、制度の説明では届かない部分の相談ができます。「うちだけじゃないんだ」と思えるだけでも、気持ちが違います。

ただし、市町によって差があります

ここは正直に書いておきます。

どの地域にも同じ支援があるわけではありません。 活動が盛んな地域もあれば、そうでない地域もあります。

お住まいの地域にどんな会があるかは、地域包括支援センターで聞くのが早いです。

「家族が担うのが当たり前」でしょうか

ここまで4つの選択肢を書いてきました。

でも、いちばんの壁は制度ではないのかもしれません。

「家族が担うのが当たり前」という風潮です。

介護保険を使うほどではない。だから家族がやるしかない。そう思い込んでいる人が、とても多いように感じます。周りもそう見ています。

仕事を休んで送迎する。早退して薬を取りに行く。それが「親孝行」として当然視される。

でも、その前提を疑っていいと思うのです。

制度の谷間は、たしかにあります。でもその谷間は、「家族がやるものだ」という思い込みによって、実際よりも深く見えているのではないでしょうか。

使えるものは、思っているより残っています。

社会全体で支えていけたら

家族が支え続けることを前提にするのではなく、家族の負担を減らすために使える制度やサービスを組み合わせて、社会全体でサポートしていける。

そうなっていくといいなと思っています。

いまはまだ、家族が抱え込むところから始まってしまう場面が多いです。でも一人ひとりが「使えるものがある」と知っていれば、少しずつ変わっていくのではないでしょうか。

この記事が、その一歩になればうれしいです。

よくある質問

Q. 訪問診療にすると、今の主治医とは縁が切れますか

切れないことが多いです。

たとえば総合病院が主治医の場合、訪問診療は外部の医療機関に依頼し、入院が必要になったら元の総合病院が受け入れる、という連携ができることがあります。

「今の先生と切れてしまうのでは」という不安が、訪問診療をためらう一番の理由だと感じています。まずは主治医に、その心配をそのまま伝えてみてください。

Q. 急に具合が悪くなって、病院に行きたくなったら

基本的には、その日の当番医にかかることになります。

ただし自治体によっては、急変時の搬送先を事前に決めておく仕組みがあります。

静岡市には「イエローカード」という制度があります。正式には在宅医療後方支援病院連携システムといって、かかりつけ医が事前にカードを発行しておくと、急変時に本人の医療情報が搬送先の病院へ伝わる仕組みです。静岡市消防署と市内5つの公的病院の協力で作られたものです。

お住まいの自治体にも似た仕組みがあるかもしれません。 これも主治医に聞いてみてください。

Q. 家族が遠方に住んでいる場合は

キーボックスを活用する方法があります。

玄関先などに鍵を入れた箱を設置し、訪問する医療者が開けられるようにしておくものです。家族が不在でも、訪問診療や訪問看護が入れます。

「立ち会えないから頼めない」と思っている方がいますが、そうとは限りません。

まとめ:まず、主治医に相談を

長くなったので、まとめます。

  • 介護保険が使えなくても、医療保険側に道がある
  • 訪問診療なら通院そのものが不要になる。ただし検査は制限される
  • 薬は届けてもらえる。認定がなくても医療保険で使える
  • 費用は高額療養費で合算できることがある
  • 家族会という受け皿もある(地域差はある)

そして、入り口はすべて主治医への相談です。

「通院が難しくなってきました」

この一言から始まります。今日じゃなくていいので、次の受診のときに言ってみてください。


介護度が低いほど必要なサービスが受けられない、という現場の課題についてはこちらに書きました。→ 介護度が低いほど困ることがある。訪問看護師が県議会の仕事に興味を持った理由